2010年1月17日日曜日

俵星玄蕃

http://www.youtube.com/watch?v=BFIwNF9iMVw

 俵星玄蕃

槍は さびても この名は さびぬ
男 玄蕃の 心意気
赤穂 浪士の 影となり
尽くす 誠は 槍一筋に
香る 誉れの 元禄櫻

姿 そば屋に やつしてまでも
忍ぶ 杉野よ せつなかろう
今宵 名残に 見ておけよ
俵崩しの 極意の ひと手
これが はなむけ 男の心

涙を ためて 振り返る
そば屋の 姿を 呼びとめて
せめて 名前を 聞かせろよと
口まで 出たが そうじゃない

言わぬが 花よ 人生は
逢うて 別れる さだめとか
思い 直して 俵星
独り しみじみ 飲みながら
時を 過ごした 真夜中に
心 隅田の 川風よ
流れて 響く 勇ましさ
ひと打ち に打ち 三流れ
あれは 確かに
確かに あれは
山鹿 流儀の 陣太鼓


 陣太鼓

時に 元禄15年12月14日
江戸の 夜風を ふるわせて
響くは 山鹿流儀の 陣太鼓
しかも ひと打ち に打ち 三流れ
思わず はっと 立ち上がり
耳を 澄ませて 太鼓を 数え

おう まさしく 赤穂浪士の 討ち入りじゃ
助太刀するは この時ぞ

もしや その中に
昼間 別れた あのそば屋が おりませぬか
名前は 何と いま一たび

逢うて 別れが 告げたい ものと
稽古襦袢に 身を固めて 段小倉の袴
股立ち 高く 取り上げし
白綾たたんで 後ろ鉢巻き 眼のつるごとく
なげしに かかるは 先祖伝来
俵 弾正 鍛えたる
九尺の 手槍を 右の手に

切戸をあけて 一足表に 踏み出せば
天は 幽暗 地は 凱々たる白雪を
蹴立てて 行く手は 松坂城

吉良の 屋敷に 来てみれば
今 討ち入りは 真っ最中
総大将の 蔵之介
見つけて 駆け寄る 俵星が
天下無双の この槍で
お助太刀おば いたそうぞ

言われた ときに 大石は
深き 御恩は このとおり
厚く お礼を 申します
されども ここは このままに
槍を 納めて お引き揚げ
くださる ならば ありがたし

かかる おりしも 一人の 浪士が
雪を 蹴立てて サク サク
サク サク サク サク サク

先生

おう そば屋か

いや いや いや いや
襟に 書かれた 名前こそ
まことは 杉野の 十兵次 殿
わしが 教えた あの 極意
命 惜しむな 名をこそ 惜しめ
立派な 働き 祈りますぞよ
さらば さらばと 右 左
赤穂浪士に 邪魔する やつは
なん人たりとも 通さぬぞ
橋のたもとで 石突き 突いて
槍の 玄蕃は 仁王立ち

打てや 響けや 山鹿の 太鼓
月も 夜空に 冴え渡る
夢と 聞きつつ 両国の
橋の たもとで 雪 踏みしめた
槍に 玄蕃の 涙が 光る

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