2011年11月3日木曜日

東京速記士会A級の問題分析

 東京速記士会主催速記競技大会A級(分速320字10分)の問題分析

 2011年10月22日開催

□まず最初は、言葉のお話であります。□文
化庁が国語に関する調査をした結果が先日発
表されましたので、その中から、言葉の意味
と慣用句についての調査結果を見てみたいと
思います。□勘違いしやすい表現の例として
(100)

よく挙げられる「情けは人のためならず」に
ついてですが、「人に情けをかけると、結局
自分のためになる」という正解をした人と、
その反対の人は、どちらも半分ずつだったそ
うであります。□また、「雨模様」という表
(200)

現に対しては、「雨が降りそうな様子」と正
しく回答した人は43%で、「小雨が降った
りやんだりしている様子」と答えた人は48
%だったそうです。□それから、「姑息」と
いう言葉について、「一時しのぎ」と正確に
(300)

理解している人は、わずか15%しかいなく
て、「ひきょうな」という意味だと解釈して
いた人が71%もいたということであります
。□さらに、「号泣する」という表現を、「
大声で泣く」と正しく回答した人は34%で
(400)

あったのに対して、「激しく泣く」と答えた
人が48%もいたそうであります。□一方、
慣用句の例を見てみると、「わずかな時間も
無駄にしない」という意味の慣用句を「寸暇
を惜しんで」で正確に回答した人は28%だ
(500)

ったのに、「寸暇を惜しまず」と反対の意味
に理解していた人が57%もあったそうです
。□また、「前に負けた相手に勝つ」という
表現をする場合、「雪辱を果たす」と言いま
すが、これを「雪辱を晴らす」と理解してい
(600)

る人も多くいて、前者が43%で、後者も4
4%ということで、ほぼ同数だったそうであ
ります。□それから、「することがなくなっ
て、時間を持て余す」ことを「間が持てない
」と正確に回答した人が29%だったのに対
(700)

して、「間が持たない」という表現だと記憶
していた人は、61%もいたということであ
ります。□なお、この調査においては、同時
に、いわゆる“お役所言葉”についても意見
が求められておりまして、8割以上の人が、
(800)

「官公庁の文書は特殊な表現が多くて困った
」という回答をしていたそうであります。□
もっとも、難解な公用文は、わかりやすい表
現にするようになっておりまして、「斡旋」
を意味する言葉として「懇請」という表現が
(900)

あったそうですが、今はほとんどなくなって
いるということであります。□また、「処置
」ではなく「措置」という表現は、相変わら
ず多用されているそうですが、公用文こそ広
く一般の人々に理解してもらう必要があるわ
(1000)

けですから、簡単な表現に変えるべきである
と思っているのであります。□それでは、次
の話題に移ります。□皆さんも御承知のとお
り、大相撲の世界において八百長問題が先日
発覚して大騒ぎになりました。□この問題に
(1100)

ついて、皆さんはどうお考えでしょうか。□
この点について、元大相撲の有名な力士だっ
た人が「土俵の矛盾」という本を出版されて
いますので、その中身を少し御紹介したいと
思います。□まず、「相撲はスポーツではな
(1200)

い」ということから話が始まっていて、相撲
というのは、神社の中での神事であり、伝統
芸能であるとともに、格闘技でもあるという
ことで、スポーツとは言えないというわけで
あります。□つまり、スポーツというよりも
(1300)

国民の娯楽の一つだったという位置付けをし
ておられます。□ただ、勝ち負けを決定し、
番付を決めて、興行を行うときには入場料を
取るわけですから、これはスポーツだと理解
する人が多いということで、スポーツはフェ
(1400)

アであるべきで八百長などとんでもないとい
う厳しい批判が起こってくるわけであります
。□すなわち、不祥事が起こると、「相撲界
だけは起こしてほしくなかった」とか、「国
技なのだから」という非難がごうごうと起こ
(1500)

るのですが、相撲界だけ清廉潔白を求められ
るというのはおかしいし、まして、相撲が国
技だとはどこにも決められていないのです。
□そして、プロ野球の世界においては、野球
を賭博の対象にすることや、薬物を使用する
(1600)

ことは法律で禁止されていますから、それが
発覚すると大問題になりますが、八百長とい
うのは法律違反ではないというわけです。□
もちろん、いい加減な相撲を取ると、緊張感
がなくなって、興行がうまくいかなくなりま
(1700)

すから、一生懸命相撲を取る必要があるとい
うわけであります。□そのためには、体重を
減らして、足腰をしっかり鍛えて、少々のこ
とでは前に倒れないようにしないと、白熱し
た相撲ができなくなるので、力士の人たちは
(1800)

日々、切磋琢磨して精進する必要があると思
います。□このような意見を述べておられる
わけですが、これに関して、有名なプロレス
ラーのお話を紹介したいと思います。□この
人は、「プロレスをできるだけ長く続けて、
(1900)

ファンの方々に楽しんでもらうため、自分は
毎日厳しいトレーニングをして、怪我をしな
いように最大限の注意を払っている」とおっ
しゃっているのであります。□つまり、オリ
ンピックで行われるレスリングという競技と
(2000)

は違って、プロレスというのは、スポーツと
してではなく興行として扱われているわけで
すが、プロレスラーの方々は、そういう気持
ちで毎日過ごしているというわけであります
。□今回の八百長事件をきっかけに、相撲界
(2100)

も考え方を変えてはどうかと思うのでありま
す。□それでは、最後の話題に移ります。□
先日、ニュートリノという物質が光よりも速
く動いたという測定結果が、日本の科学者も
参加している研究グループから発表されたの
(2200)

であります。□このニュートリノというのは
、物質を構成する最小単位の素粒子でありま
して、これが光速を超えたということが証明
されれば、現代の物理学というものを根底か
ら見直さなければならないことになるそうで
(2300)

あります。□つまり、「物体の速度は光速を
超えられない」ということと、「運動する物
体では時間がゆっくり進む」ということにな
っておりまして、これは、アインシュタイン
という有名な科学者が提唱したもので、こう
(2400)

いう時間と空間の関係を示す理論が、現代の
物理学の基本理論となっているからでありま
す。□この国際的な研究グループは、人工的
に作ったニュートリノを発射して、700キ
ロも離れた場所でそれをキャッチするという
(2500)

実験を、この3年間で1万5000回も繰り
返したそうであります。□その結果、秒速3
0万キロとなっている光の速度よりも、1億
分の6秒速く動いていたということでありま
す。□これがもし本当に証明されれば、どう
(2600)

いうことになるかと申しますと、タイムマシ
ンという空想の機械が現実味を帯びてくると
いう話であります。□つまり、アインシュタ
インの相対性理論では、物体が光の速度に近
づくに連れて、時間の流れは緩やかになりま
(2700)

して、光速になると完全に止まってしまうわ
けであります。□そうすると、光速を超えた
場合はどうなるかというと、時間が戻る可能
性があることから、時空を超えられるタイム
マシンという機械を製作できるのではないか
(2800)

というわけであります。□ところで、従来、
この相対性理論に対しては、あらゆる角度か
ら検証が行われておりまして、絶対に誤りは
ないとされてきましたが、今回のこの測定結
果の発表を受けて、このニュートリノを使っ
(2900)

て同様の実験ができる研究所が世界には幾つ
かありますので、そういう研究所において検
証実験が行われるようになるということであ
りまして、その結果がどのようになるか、今
から非常に楽しみであります。□なお、今回
(3000)

の実験における問題点は何かと申しますと、
測定に使用された時計の精度だそうでありま
す。□つまり、皆さんはGPSという言葉を
聞いたことがあるかと思いますが、これは「
衛星利用測位システム」というものでありま
(3100)

して、そもそもこのGPSの技術にも相対性
理論が使われているのであります。□したが
って、相対性理論でもって相対性理論の問題
点を指摘するというようなことはおかしいと
いう科学者の意見もあるわけであります。□
(3200)

それはともかく、科学の世界は今後とも進ん
でいくため、興味は尽きないものであります
。(了)
(3244)
 3200(句読点等を含む)+41(□=改行・一字空け)+3(了)=3244

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