2010年11月27日土曜日

2010年速記A級問題

 2010年速記A級問題

 東京速記士会★速記競技大会問題文★

 平成22年10月16日(土)開催

 ◆A級◆(分速320字10分)

□まず最初は、常用漢字の改定に関するお話であります。

□ここ数年、常用漢字を見直す委員会が政府において開催されてきた結果、最終的な案が先日決定されたのであります。それによると、現行の常用漢字は1945字ですが、これに196字が追加されることになり、その一方で、5字が削除されることになったため、合計2136字になるそうであります。

□要するに、基本的には、従来の常用漢字になかったものからよく使用される漢字を加えて、余り使っていない漢字は削除するということであります。

□しかし、読むことはできても、書くことが困難な漢字も結構追加されているため、これは問題だと思っています。

□すなわち、実際に手で書くよりもパソコンなどで入力することが多くなったため、手で書くのは難しい漢字も追加したということであります。

□そして、「すべての漢字を手書きできる必要はない」と明記されるそうですが、学校教育においては手書きの必要性が重視されていますので、手書きできなくてもよい漢字をしっかり限定する必要があると思います。

□そして、そのポイントは、偏やつくりなどを使って説明することが非常に難しい漢字は手書きしなくてもよいとすべきであると思います。

□それはともかく、都道府県の名前で使われている漢字は全部追加されました。ですから、岐阜の阜とか愛媛の媛などは追加されるわけでありまして、これは、当然と言えると思います。ただ、三鷹の鷹という漢字については、意見が分かれたとのことでありますが、最終的には追加されませんでした。これは、鳥の名前であり、よく使うことはないからという理由でしたが、三鷹市の人々は残念に思っておられたことでしょう。

□それから、障害者という言葉を漢字で書く場合、害という字は好ましくないということで、平仮名で表記する地方自治体が増加していて、政府においても平仮名を使っている場合があるそうですから、別の漢字が1字追加されるかもしれません。

□それから、「しんにゅう」と呼ばれている漢字の一部分は、常用漢字で書く場合は1点しかつけないことになっていて、それ以外の漢字は2点とすることになっていました。しかし、今回の改定においては、これも少し認められるそうですが、できるだけ覚えやすくするために、なるべく例外がないようにすべきだと思います。さらに、「私」という漢字の読み方は「わたくし」だけだったけれども、「わたし」も認めることになるそうですが、これはよくないと思います。

□いずれにしても、29年ぶりの改定によって、新常用漢字が本年じゅうに告示されるそうであります。

□それでは、次の話題に移ります。

□皆さんは結核という病気の名前を聞いたことはあるけれども、どんな病気なのか知らない人が多いと思います。この病気は、かつては年間15万人も亡くなっていた非常に怖い病気だったけれども、最近では、過去の病気という扱いですが、それは大きな間違いであり、この病気が復活しているのだそうです。

□すなわち、結核というのは、感染しても発症するのは20%に過ぎないため、自分の知らないうちに家族や友人にうつしている場合があるそうであります。

□平成20年の統計によると、東京だけでも3200人、全国では2万5000人が発症しているそうですが、感染していても発症していない人が、何と200万人もいると推定されております。ですから、結核というのは、依然として我が国における主要な感染症であると言えるのでありまして、非常に多くの結核予備軍がいるということであります。

□特に、患者数が多いのは、都市部の高齢者や若者であります。高齢者というのは、若いころに結核に感染している場合が多いのですが、病気になったりして、体力と抵抗力が低下してくると、発症するという場合が多いわけです。

□一方、若い人は、予防接種の効果というのは十数年しかありませんから、その効果が切れたころに感染して、発症するというケースがあるというわけであります。

□ところで、この結核の症状についてですが、食欲や体重が落ちるという症状があります。それから、寝汗をかくということです。また、せきが続くという症状もあります。しかも、これらはかぜの症状とよく似ていますから、気がつかない場合があります。しかし、せきが2週間以上続き、たんに血が混じるようであれば、結核を疑ったほうがよいということです。もちろん、血が混じったたんが出なくて、せきだけが長期間続く場合もあるそうですが、そういう場合でも検査を受ける必要があります。

□この検査方法には、まずレントゲン写真をとるのですが、確定するためには、たんを採取して結核菌の有無について検査する必要があります。そして、その結核が発症した場合は、まず、抗生物質を飲んでいくことになりますが、たんの中に結核菌がなくなれば、入院して治療しなくてもよいそうです。もちろん、周りの人々にうつす可能性があれば、専門の病院に入院する必要があります。

□なお、糖尿病や腎臓の悪い人、さらに、胃の手術をした人は、結核が発症するリスクが非常に高いと言われておりますから、特に注意する必要があるということであります。

□皆さん、こういう結核についての知識も、しっかり持つようにしてください。

□それでは、最後の話題に移ります。

□今度は言葉に関するものです。我々は義務教育の時代から多種多様な言葉を勉強してきましたが、使い方がわかっていないと大きな恥をかく場合が多いため、十分注意する必要があります。

□例えば、「骨が折れる仕事だが、やり甲斐がある」という表現をしたところ、「私は、骨折するような仕事はやりたくありません」と答えた人があったそうです。また、「船頭多くして、船山に登る」ということわざは、「それぞれの人が勝手なことをすると、とんでもないところに行ってしまうことがある」という意味であります。しかし、これを、「船頭さんがたくさんいたおかげで、船を山の上まで上げることができた」という理解をしている人があるそうであります。

□さらに、「情けは人のためならず」ということわざは、「人に情けをかけておくと、やがて、自分のところに返ってくるものだ」という意味です。しかし、これを、「情けをかけるのは人のためにならないから、情けをかけないほうがよい」と解釈している人が多いということであります。

□特に、最近の若い人々はこういう言葉に対する知識のレベルが低下していると言われており、作文力についても能力が下がっていると指摘されております。

□すなわち、ある小学校で、先生が作文を書かせるために、「遠足で動物園に行ったときの話」というテーマを出されました。そうすると、多くの子供たちは「遠足に行った。とても楽しかった」と書いたところで、手がとまってしまったそうであります。なぜこのようになったのかと申しますと、動物園に行っても、ただ単に、動物を見ているだけで、動物の行動を観察したり、その様子をうまく表現できなくなっているからであります。

□これと同じことが、若い社会人の人たちにも言えまして、主語と述語が整った長い文章を書く能力が低下しているそうであります。

□それは、携帯電話やパソコンの普及によって、メールでやり取りする場合が増加していることが原因の1つだと言われています。それから、言葉の意味を理解する能力が低下してきていることも原因の1つであります。

□例えば、「世間では、それはすばらしいと評価しているようだ」という表現は、「そういうことを言っている人があるけれども、自分はすばらしいと思っていない」と理解するのが普通ですが、そういう理解が全くできない人が増加しているそうであります。

□以上のように、最近の若い人々は、国語力、観察力、表現力というものが低下しているようでありますから、少しでも力をつけるようにしてほしいと思っております。(了)

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