字数計算の基準

　速記朗読問題における字数計算の基準（案）
（１）発音されなくても、原稿用紙の１升を要するものは、すべて１字として計算する。
（２）句読点（。、）、中点（・）、かぎ括弧（「」）、１字ダッシュ（―）、括弧（）〔〕、改行１字あけ□などは１字として計算する。
（３）２字ダッシュは２字として計算する。（──）
（４）……は２字として計算する。
（５）速記検定試験においては、句読点をミスとはしない。
（６）速記競技会等において、句読点が問題にあって解答にない場合、解答にあって問題にない場合にミスとするかどうかは、審査員の判断とする。
（７）改行は、字数として計算しない。
（８）仕切り線等は、３字として計算する。
□□□□─────────────（４・１３）
□□□□□─────・─────（５・５・１・５）
（９）「異議なし」は、１７字として計算する。
□□□〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕（３・１４）
（１０）次の呼名は、１５字として計算する。
○内閣総理大臣（白鵬一郎君）□
（１１）句読点、改行のところで、朗読者は一息入れるので、それなりの時間がかかります。句読点を字数に入れないと、句読点で一息つく分朗読時間が少なくなって、他の部分の朗読スピードがその分速くなることになります。
　句読点、改行１字あけも字数に勘定することで、適切なスピードになります。

　ことしの高速度速記競技会を例にとって考えてみますと、高速度速記競技会は５分間１７５０字、１０分間換算で３５００字とされていますが、句読点や改行１字あけも字数として計算しますと５分間１８７０字、１０分間換算で３７４０字であることがわかります。

　１０月２８日は速記記念日です。
　日本の速記の普及は、１８８２年（明治１５年）１０月２８日に行われた田鎖綱紀による速記講習会から始まりました。
　わずか１２８年前のことです。
　日本の速記の本格的な普及は、これからだと思います。

　ことしの高速度速記競技会の問題を２０字ごとに改行して字数を計算します。

2010年10月16日【平成２２年　高速度速記競技会　問題文】
□きょうは、エネルギーについてお話しして
みたいと思います。□私たちが生活していく
上で欠かせないエネルギーというのは、やは
り石油でありましょう。この石油に関連しま
して、最近、大きな事故が起こりました。ア★１００
メリカのメキシコ湾におきまして、油田の施
設が爆発し、海底にありましたパイプライン
が壊れまして、たくさんの原油が海に流れ出
したのであります。□このような大きな爆発
が起きたことによりまして、たくさんの被害★２００
が出ましたけれども、長期的には、自然環境
への影響ということが心配されているところ
であります。加えて、海底油田というものの
開発もおくれてしまうのではないかというこ
とも言われております。□ここで、海底油田★３００
ということについて少し述べてみたいと思い
ます。□油田といいますと、中東などの産油
国が思い出されるところでありますけれども
、やはり陸上で開発されるものには限りがあ
りますので、近年におきましては、陸上から★４００
海、海の中でも、比較的浅いところから始ま
りまして、だんだんと深いほうへと開発は進
んでいきました。□こういう中におきまして
、ある程度の深さまで掘り進めていきますと
、コストがかかり過ぎまして採算がとれない★５００
ということもありましたけれども、さまざま
な技術が進歩し、費用が抑えられるようにな
りました上に、原油価格の高騰ということも
ありまして、二〇〇〇年ごろからは一気に開
発が進んだのであります。現在におきまして★６００
、このような海底からとれる石油というのは
、全体の三割から四割にも達するというふう
に言われております。□しかし、一方で、石
油というのは限りある資源でありますし、御
存じのように、世界的には地球環境問題への★７００
対応が急がれるところであります。いかに環
境に負荷をかけないようにして経済活動を続
けていくかということで、各国におきまして
、エネルギーに対するさまざまな研究、開発
が進められているのであります。□その中に★８００
おきまして、クリーンなエネルギーとして注
目を浴びておりますのが、再生可能エネルギ
ーであります。□この再生可能エネルギーと
いうのは、自然の中で起こる現象から取り出
せるエネルギーのことでありまして、繰り返★９００
して使うことができます。太陽のエネルギー
を利用するものでありますとか、風力、バイ
オマスなどがこの分野に属します。□そこで
、太陽光発電というものについて考えてみま
す。□皆さん御承知のとおり、太陽光発電と★１０００
いうのは、太陽の光から得られたエネルギー
を電力に変えて使っていくものであります。
太陽の光があればどこでも発電ができるとい
うことで、次世代のエネルギーとして以前か
ら注目を集めておりました。我が国は早くか★１１００
ら開発を進めておりまして、世界の中でも高
い技術力を持っています。また、これに関連
する産業のすそ野も広いということで、雇用
でありますとか経済の振興という面からも期
待されているのであります。□しかしながら★１２００
、このエネルギーが一般に普及していくため
には課題が残っています。□その一つは、設
置に際しましてコストがかかるということで
あります。これらのシステムにつきましては
、自治体などからの助成もありますし、余っ★１３００
た電力を買い取るという仕組みも始まりまし
たけれども、余り広まっていないというのが
現状であります。□また、技術的な問題とし
ましては、取り込みました光を効率よく電力
に変えていくということがなかなか難しいよ★１４００
うであります。産業界などのますますの研究
、開発によりまして、問題を解決していくこ
とが望まれるところであります。□しかるに
、この効率をよくするということは、何も太
陽光発電だけに限った話ではありません。あ★１５００
らゆる分野におきまして、いかにしてエネル
ギー効率を高めていくかということが大きな
課題になっております。せっかく資源があり
ましても、それをうまく使えなければ、むだ
になってしまいます。限りある資源でありま★１６００
すし、つくり出すことが困難な資源だからこ
そ、上手に使っていかなければならないとい
うことなのであります。□私たちが子供のこ
ろ、自分たちが大人になるころには石油はな
くなっているかもしれないという話をよく聞★１７００
きました。幸いなことに、そうはなりません
でしたけれども、現代は、いつエネルギー危
機がやってきてもおかしくはない状況にあり
ます。□今後におきましても、世界的なエネ
ルギー需要はますますふえることが予想され★１８００
ます。次の世代に暮らしやすい環境を引き継
ぐためにも、エネルギーの問題について、私
たち一人一人が真剣に考えていかなければな★１８６０
らないのであります。（了）
１８７３字【句読点、一字あけ、（了）を含む】

　句読点も改行もないような文章は、読めたものではありません。
　速記録を作るとき、あるいは普通に作文をするときもそうですが、正しい文字を当てはめていくことが大切なことはもちろんですが、適切に句読点や改行を入れていくことも同じくらい大切なことです。
　句読点や改行も大切に考えるという立場に立つ私としては、句読点や改行の際の１字あけも字数に勘定すべきであると主張してきました。今もその気持ちは変わりません。
　句読点や一字あけも文字として勘定するもう一つの狙いは、字数計算を容易にすることで、問題作成を簡単にするということです。
　一人の速記者を育てるには、たくさんの問題作成と朗読が必要です。作成した文章から句読点や改行１字あけの分を取り除いて字数計算をするような手間のかかることをしても何の意味もありません。
　速記指導者の負担を軽くするためにも、正しい文章を書く習慣をつけるという意味からも、句読点や改行の際の１字あけも字数に勘定すべきであるというのが私の考え方です。

　次に、ことしの高速度速記競技会の問題をすべてひらがな・カタカナに直して音数を調べてみましょう。

2010年10月16日【平成２２年　高速度速記競技会　問題文】
□きょうは、エネルギーについておはなしし
してみたいとおもいます。□わたしたちがせ
いかつしていくうえでかかせないエネルギー
というのは、やはりせきゆでありましょう。
このせきゆにかんれんしまして、さいきん、★１００
おおきなじこがおこりました。アメリカのメ
キシコわんにおきまして、ゆでんのしせつが
ばくはつし、かいていにありましたパイプラ
インがこわれまして、たくさんのげんゆがう
みにながれだしたのであります。□このよう★２００
なおおきなばくはつがおきたことによりまし
て、たくさんのひがいがでましたけれども、
ちょうきてきには、しぜんかんきょうへのえ
いきょうということがしんぱいされていると
ころであります。くわえて、かいていゆでん★３００
というもののかいはつもおくれてしまうので
はないかということもいわれております。□
ここで、かいていゆでんということについて
すこしのべてみたいとおもいます。□ゆでん
といいますと、ちゅうとうなどのさんゆこく★４００
がおもいだされるところでありますけれども
、やはりりくじょうでかいはつされるものに
はかぎりがありますので、きんねんにおきま
しては、りくじょうからうみ、うみのなかで
も、ひかくてきあさいところからはじまりま★５００
して、だんだんとふかいほうへとかいはつは
すすんでいきました。□こういうなかにおき
まして、あるていどのふかさまでほりすすめ
ていきますと、コストがかかりすぎましてさ
いさんがとれないということもありましたけ★６００
れども、さまざまなぎじゅつがしんぽし、ひ
ようがおさえられるようになりましたうえに
、げんゆかかくのこうとうということもあり
まして、にせんねんごろからはいっきにかい
はつがすすんだのであります。げんざいにお★７００
きまして、このようなかいていからとれるせ
きゆというのは、ぜんたいのさんわりからよ
んわりにもたっするというふうにいわれてお
ります。□しかし、いっぽうで、せきゆとい
うのはかぎりあるしげんでありますし、ごぞ★８００
んじのように、せかいてきにはちきゅうかん
きょうもんだいへのたいおうがいそがれると
ころであります。いかにかんきょうにふかを
かけないようにしてけいざいかつどうをつづ
けていくかということで、かっこくにおきま★９００
して、エネルギーにたいするさまざまなけん
きゅう、かいはつがすすめられているのであ
ります。□そのなかにおきまして、クリーン
なエネルギーとしてちゅうもくをあびており
ますのが、さいせいかのうエネルギーであり★１０００
ます。□このさいせいかのうエネルギーとい
うのは、しぜんのなかでおこるげんしょうか
らとりだせるエネルギーのことでありまして
、くりかえしてつかうことができます。たい
ようのエネルギーをりようするものでありま★１１００
すとか、ふうりょく、バイオマスなどがこの
ぶんやにぞくします。□そこで、たいようこ
うはつでんというものについてかんがえてみ
ます。□みなさんごしょうちのとおり、たい
ようこうはつでんというのは、たいようのひ★１２００
かりからえられたエネルギーをでんりょくに
かえてつかっていくものであります。たいよ
うのひかりがあればどこでもはつでんができ
るということで、じせだいのエネルギーとし
ていぜんからちゅうもくをあつめておりまし★１３００
た。わがくにははやくからかいはつをすすめ
ておりまして、せかいのなかでもたかいぎじ
ゅつりょくをもっています。また、これにか
んれんするさんぎょうのすそのもひろいとい
うことで、こようでありますとかけいざいの★１４００
しんこうというめんからもきたいされている
のであります。□しかしながら、このエネル
ギーがいっぱんにふきゅうしていくためには
かだいがのこっています。□その一つは、せ
っちにさいしましてコストがかかるというこ★１５００
とであります。これらのシステムにつきまし
ては、じちたいなどからのじょせいもありま
すし、あまったでんりょくをかいとるという
しくみもはじまりましたけれども、あまりひ
ろまっていないというのがげんじょうであり★１６００
ます。□また、ぎじゅつてきなもんだいとし
ましては、とりこみましたひかりをこうりつ
よくでんりょくにかえていくということがな
かなかむずかしいようであります。さんぎょ
うかいなどのますますのけんきゅう、かいは★１７００
つによりまして、もんだいをかいけつしてい
くことがのぞまれるところであります。□し
かるに、このこうりつをよくするということ
は、なにもたいようこうはつでんだけにかぎ
ったはなしではありません。あらゆるぶんや★１８００
におきまして、いかにしてエネルギーこうり
つをたかめていくかということがおおきなか
だいになっております。せっかくしげんがあ
りましても、それをうまくつかえなければ、
むだになってしまいます。かぎりあるしげん★１９００
でありますし、つくりだすことがこんなんな
しげんだからこそ、じょうずにつかっていか
なければならないということなのであります
。□わたしたちがこどものころ、じぶんたち
がおとなになるころにはせきゆはなくなって★２０００
いるかもしれないというはなしをよくききま
した。さいわいなことに、そうはなりません
でしたけれども、げんだいは、いつエネルギ
ーききがやってきてもおかしくはないじょう
きょうにあります。□こんごにおきましても★２１００
、せかいてきなエネルギーじゅようはますま
すふえることがよそうされます。つぎのせだ
いにくらしやすいかんきょうをひきつぐため
にも、エネルギーのもんだいについて、わた
したちひとりひとりがしんけんにかんがえて★２２００
いかなければならないのであります。（了）★２２１７音

　５分間２２１７音ということは、１０分間に換算しますと４４３４音になります。
　過去、高速度速記競技会においては、１０分間に換算して４８００音以上という非常に難しい問題が何度も出されたことがありますので、１０分間４４３２音は、中程度の問題と言えるかと思います。
　問題は、句読点・１字あけも１字として計算すること、字数だけでなくて音数も計算することによって、適切な難易度の問題を作成することができると思います。